明日襷のブログ

葉山神社竣工祭レポート

  多くの人たちの思いを乗せ,奉納プロジェクションマッピング「希望の船」は,葉山神社竣工祭にて無事出航することが出来ました。 感謝の気持ちとともに,遷座祭〜プロジェクションマッピングの奉納までをレポートいたします。 ・遷座祭とは 今回,震災で被害を受け,全壊してしまった葉山神社本殿が再建されました。 神社は,本殿と拝殿に分かれており,我々が普通お参りするのは拝殿の方です。 本殿には,神社のご神体が収められていますが,本殿が壊れてしまったり,立て直す際には別の場所に仮に移動します。 そして,遂に社殿が完成すると,神社の宮司がご神体を持ち,行列を組んで本殿の御扉の中へと納められるのです。 その日を,遷座祭といいます。 神社の遷座祭は,神社の破損,再建などがされなければ行われない非常に珍しい祭事です。 ご神体は宮司以外人の目に触れる事は許されません。 神職が白い幕で宮司とご神体を囲み,ゆっくりと歩いていきます。 各浜の氏子総代長,役員が一人一人提灯を持ち,静寂と暗闇の中厳粛に行われます。 ・遷座祭の様子 夕方,暗くなる頃僕らは神社に到着しました。 葉山神社の社殿は,今まで掛かっていた足場が外れ,その全貌を見る事が出来るようになっています。 完成し,扉が開けられた社殿。 新しい木の匂いが漂い,雄勝の人たちが集まって来ています。 遷座祭には,15ある雄勝の浜にある神社氏子総代長や,葉山神社の奉賛会会長など,雄勝町の浜を代表する住民の方々が提灯を持ち,ご神体の先を歩きます。 やがて社務所の中に人が集まり,神事が執り行われていました。 応援の神職も他の神社から出張し,厳粛な雰囲気が漂います。 一人一人,名前が呼ばれます。 咳払い,鼻をすすることさえも許されません。 雅楽の演奏が始まりました。 行列が,出来てゆきます。 総代たちが全員外に出た後,社務所の電気が消されました。 雅楽の音と暗闇の中,ご神体が運ばれます。 空気は,限りなく澄み,高く張り詰めています。 白装束に,マスクのような白覆面をし,四人で白い幕を持ちながら宮司とご神体を囲みます。 ゆっくりと,本当にゆっくりと行列は進んでいきました。 一人一人が拝殿に上がり,ご神体の到着を待ちます。 静まり返った境内。空には,満点の星空です。 提灯の淡い光だけが光り,参列者は息を呑みます。 そして,拝殿の階段を登り,ご神体は御扉の中へと収められました。 ・神楽,荒神舞の奉納 ご神体が収まった後,拝殿では雄勝法印神楽の一番,荒神舞が奉納されました。 二人の太鼓と,一人の笛。 荒神舞は,たった一人,舞手が激しく踊ります。 この舞は神社完成の祭に舞われるものだそうです。 古い記録に,残っていたのでしょう。 厳粛な雰囲気から,一気に激しい空気へ。 遷座祭は,滞りなく完了し,本殿へご神体が収められました。 明日は,竣工奉祝祭です。 ・葉山神社竣工祭本祭 9月20日,竣工祭の初日を迎えました。 9月20日,本祭1日目の様子をお伝えします。 ・葉山神社の歴史 竣工祭初日は,晴れ。 暑いくらいの日でした。 目が痛いくらいの青空の下,真っ白な新築の神社は美しく輝いていました。 青い空。青い海。 新築の葉山神社社殿には,たくさんの人が代わる代わるお参りをされていました。 社殿の横には,神楽舞台が建てられています。 雄勝の神楽舞台は,全て組み立て式で 、くさびによって固定され,祭りの日以外はしまって置けるようになっています。...

石巻雄勝町 葉山神社竣工奉祝祭/2015年9月20,26,27日

2015/09/14 神輿、祭

[日時]     9月20日,26日,27日 竣工奉祝祭 [場所] 石巻市雄勝町大浜6-2 葉山神社境内 [主催] 葉山神社   9月20日から27日までの午前10時~午後4時まで御参拝者は社殿において神職によるお祓いをうけ随時正式参拝ができます。   ■葉山神社 石巻市雄勝町,大浜に鎮座する神社。後ろには霊峰,石峰山がそびえ,本宮を石神社と言います。 石神社は,延喜式神名帳記載の式内社で,1800年以上の歴史があると言われています。 1800年以上の悠久の時,雄勝の人の暮らしを見守って下さっていました。 御祭神は,一寸法師のモデルとも言われているスクナヒコナノカミ。 御神体は鎌倉時代に作られた薬師如来であり,修験道の霊山であった石峰山の文化が残っています。 葉山神社の社殿は2011年3月11日の東日本大震災により全壊してしまいました。   本竣工奉祝祭は,震災後4年半の歳月が過ぎ,やっと再建に至った社殿建造の悦びを祝福するものです。 奉祝祭前日に行われる遷座祭は,神職,雄勝氏子のみで行われます。 御神体が収められる本殿へ,御神体が遷座されます。 約40名で行われる行列。咳払いや,鼻をすすることも許されません。 遷座の際には,雄勝の重要無形民俗文化財にも指定されている雄勝法印神楽の1演目,「荒神舞」が奉納されます。   ■雄勝法印神楽二十四番奉納    雄勝法印神楽は,重要無形民俗文化財にも指定されており,雄勝町には各浜の有志からなる保存会が結成され,代々引き継がれてきました。 雄勝の法印神楽は,修験者山伏から伝えられたと言われており,主に日本神話を演目の題材にしております。 雄勝の各浜のお祭りでは必ず奉祝行事として神楽が舞われます。 地元の人に愛される雄勝法印神楽,神楽の秘伝が書かれている「カンナギ」に記されている演目の中で,現在舞うことが可能な二十四の演目を今回の竣工祭で奉納されます。 雄勝法印神楽の調子は,太鼓二人,笛一人で構成されており,勇壮な演奏の中で舞われる神楽は,艶やかなものからダイナミックなものまで,様々です。 竣工祭の日まで,神楽保存会のメンバーは毎日稽古を行っており,竣工祭に向け改めてその技を磨いています。 今回の竣工祭をきっかけにして復活した演目もあります。その一つ,「叢雲」では ,龍の人形を使用しますが,震災の被害にあってしまいました。今回,龍の人形も復活し「叢雲」が舞われることとなります。 ※「叢雲」の奉納は27日です。     ■「希望の船」プロジェクションマッピング奉納 9月20日18時45分より,新築の葉山神社拝殿にプロジェクションマッピングが奉納されます。 本プロジェクションマッピングは,震災後雄勝へ訪れたボランティアの有志により製作,奉納されるものです。 震災後ひとりひとりが様々な関わりをした雄勝町。 雄勝町のとても大切な神社竣工にあたり,「恩返し」と「お祝い」の意味を込め奉納されます。 プロジェクションマッピングは,筑波学院大学,筑波大学の教員と学生による合同チームにより製作され,雄勝小学校小学生により製作された「希望の船」の版画をテーマにしています。 「希望の船」は,左側から震災の日,現在の雄勝,光り輝く未来を表現しています。 中央に描かれた船は,伊達政宗の時代に作られたと言われている「サン・ファン・バウティスタ号」をモデルにしており,未来へ向け子供達が乗っています。 本プロジェクションマッピングでは,奉納する有志たちが「希望の船」クルーとなり船に乗り込み,共に輝く未来へ向かっていく物語となっています。 版画「希望の船」 マッピングが映し出される葉山神社拝殿(建設中) 試写,映し出される「希望の船」   「希望の船」クルー,マッピング奉納賛同者は,クラウドファンディングサイトにて9/25まで募集されています。 @石巻雄勝町 1000年に1度の祭で「恩返し」プロジェクションマッピングを奉納したい! https://motion-gallery.net/projects/ogatsu-hayama ■参考HP 葉山神社・石神社 http://isono-hayama.blogspot.jp/ 雄勝法印神楽 http://www.geocities.jp/hoinkagura/...

神輿,バンコクへ2

深夜3時。 ホテルの電話が鳴る。 僕は2日間のバンコクでの渡御を終え,疲れて眠っていた。 急な電話、ほとんど反射的に受話器を取った。 「はい、もしもし」 「スコールで会場が壊れた、屋根が、落ちた」 朝,今日も蒸し暑い。スコールの後のバンコクは温度と湿気で汗が噴き出してくる。 昨日の電話を気にしながらも,少し早めの朝食を食べた。 バンコクに並ぶたくさんの屋台。 道行く観光客も,バイクタクシーの運転手も,おそらく地元のタイの人も,バーベキューに使いそうなカラフルなプラスチックの机と椅子に座り,料理を食べている。 大通りに面した歩道。車が行き交う中,皆,日常の時間が流れている。 毎日,同じおばちゃんが同じようにご飯を作る。 みな茫洋と景色をのぞみ,淡々と朝食を摂っていた。 日本から一緒に来た日本文化のチームは,相変わらず陽気だ。 会場はほとんど復旧されていた。 おそらく屋根が落ちたのだろう会場のブースに少し痛みが見えたが(会場においてあったハローキティの人形に落ちたのだろうか,張り合わせたような跡がある) 特に大きな損傷はない。 タイの職人が素晴らしいチームワークを見せ,素早く復旧した。 控え室はかなり濡れていたし,備品も浸水していたが予定通りイベントは続行。 昨日買って置いておいたビールとつまみが無くなってしまったのは寂しかったが,仕方がない。 バンコクは,暑い。 昨晩の雨でいくらか濡れてしまった神輿の綱をチェックし,緩んでいたら締め直す。 今日がバンコク最後の1日だ。 夕方,神輿は上がる。 3日間の祭りの中で,1日目と2日目も神輿は上がった。 少しづつ,気持ちがまとまってきた。 最終日の今日,どうなるか。 拍子木を持ち,神輿を先導する僕はコンダクターだ。 担ぐ人たちの気持ちをコントロールし,神輿に思いを滾らせ,可視化する。 神輿というあまりに大きな宿題に対する答えを,探さなければ。

神輿,バンコクへ

神輿が,バンコクにある。 お神輿とは,何だろう。きっとそれには答えられない。 答えのない存在だ。それは日本のカミサマへの考え方。 形でも,伝統でも,意味でも無いと思う。 意味のない神輿、って何だろう。 意味のある神輿,って何だろう。 僕は深く考える。 お神輿の正体を。 杭一本でいい。それが答えであるならば,神輿の正体はそこにあるはずだ。 バンコクに神輿がある。そこにいる人たちが,真剣な顔で,汗を流す。 眼差しが変化する。目が,熱くなる。 そのあと,最高の笑顔,拍手。 そこに答えがあるのでは無いか。神輿の正体を知りたい。 僕はまた明日,もう一度神輿を上げる。たくさんの人の,心を揺らすために。

南仏神輿物語13  銀のベールの下には

2014/12/16 フランス神輿

覚えているだろうか。 子供の頃の12月,ときめくような朝を迎えた日。 大人達は子供達に公然と夢と言う名の嘘をつき,子供達はいつしか気付き始める。 気付いていることがクールなような気がして,ただ子供はささやかな朝を迎えるために,根拠の無い現実を模索している。 朝起きて,リビングに飾られるツリーの下に置かれている煌びやかな異質。 一週間もすればそれは日常となりときめきは失せてしまい,さらに来る新年の幸運を期待する。 子供達は普段より早起きして,急いで異質を確認するのだ。 南フランスの町,ダクス。 この高校へと僕たちはやっと辿り着いた。 思えば長い道のりだった。 出会いと小さな奇跡が重なって産まれた物語が始まろうとしている。 日本から,10000キロ。 見たことも聞いたことも無い場所。 そこで産まれる縁と,遠い物語を僕は宙を見て想像していた。 神輿が,高校に届いているはずだ。 僕は高校に来て一番最初に神輿のことを尋ねた。 それが置いてあるのは僕らが泊まる体育館だと言う。 案内してくれる二人の教師との自己紹介もままならないうちに,僕は小池君とともに神輿の姿を探した。 体育館の端にひっそりと置かれている銀色の包みに梱包された大きな塊。 そして大きな段ボールの数々。 僕の心には一瞬の少年が甦っていたような気がする。 梱包を解く胸の高鳴りは,忘れていた感情の記憶を取り戻していた。 銀の包みの中には,二人で磨き上げた神輿の姿が。 赤銅色に鈍く艶やかな木部に,眩しく光る真鍮の錺。 10000キロの旅を終え,寸分の変わりもなく神輿はここにあった。 物語のページがめくられた瞬間だった。 銀の包みを,ベールを取った瞬間,僕の手から伝わってくる電流のような感覚。 日本の,故郷の,じいさんの思いが神輿とともに弾けた。 何かが,繋がった。 これから作られる風景は,どんなものなのだろう。 神輿を上げるたび,人のうねりと思いが作る風景はどんな時も美しい。 思いがひとつに集まった神輿の姿は,たまらなく妖艶だ。 それがどんな場所でも,どんな人でも。 人間のエネルギーが垣根を超えて集まるのだとしたら。 僕は遠い地で,神輿と一瞬の約束を交わした。 “beautiful!” 神輿が露になった瞬間に,時が止まったようにみな目を見張った。 見たことも聞いたことも無い,日本からの宝物。 この一瞬時が止まるような風格が,神輿の形の力なのだろう。 歴史が辿り着いたデザインは,もうすでに人の心へ刺さっていた。 開かれた時とともに,物語はさらに紡がれて行く。

南仏神輿物語12 ダクス

2014/11/20 フランス神輿

フランスを巡る秋の匂い。 刈り取られた小麦畑が創り出す丘の三次曲面が美しい。 古い石造りの家は風景に自然と参加している。 そこを行く人の姿は爽やかで,車も少ない。 日本の田舎のように高い建物は見られず,一軒一軒が遠い。 広い空のその向こうまで畑や草原は広がっており,時折そこを牛や羊がさも気持ち良さそうに歩き,草を食む。 自由な風が吹いていた。 僕たちは窓を全開にしてそんな自由な風をめいっぱいに感じながら陽気にフォルクスワーゲンを走らせた。 異国の地,日本から来た一風変わった仲間達が走る。 詳細な地図はない。 おおよその方角を目指し,見知らぬ道を走っていく。 静かで,どこか明るい空気の中だ。 車内ではさっき買ったばかりのチーズと生ハムをはさんだサンドウィッチがたくさん作られて,フランスの豊かな文化を体いっぱい感じていた。 ちっとも言葉のわからないラジオが流れ,音楽が流れる。 僕も運転しながら,ほとんど誰もいない道を自由気ままに走らせていた。 僕たちはダクスへ近づいていた。 目印はたまに見える標識だけ。 ダクスと言う文字をひたすら探し,時に舗装されていない道も行く。 豊かな空気に育まれたモモやプルーンをかじり,車内にずっと響く大きな笑い声は,これからはじまるたくさんのい素晴らしい物語を予感させていた。 2時間ほど走っただろうか。 「町」が現れた。 今までとは全く違う車の数。 大きなスーパー,商店街。 町を貫く大きな川は,アドゥール川。 町にはルノーとシトロエンが溢れる。 BMWとメルセデスは日本と同じくらい走っていた。 日本車は少ない。 車がごった返す橋の下を,車高の高い座席からのぞくと美しく川は流れている。 見るもの全てが新しい。 こんな遠くの土地に祖父が作った神輿が来ているなんて想像しきれない。 僕たちは最初の目的地,ダクス・ランド・ハイスクールへ近づいている。 そこにはきっとたくさんのご縁が待っているんだ。 初めて見る闘牛場を横目にフォルクスワーゲンは走る。 ダクス・ランド・ハイスクールはかなり大きな高校だ。 まだ誰も電話を使えないのでとりあえず乗り込むしか無い。 やっと探した駐車場に車を停めた。 外へ出て,思い切り体をのばす。 思えば,東京から目的地ダクスまで20時間以上かかっている。 目的地へ本当にやっとついた開放感が体を満たし,ダクスの空気を胸いっぱい吸って,僕たちは学校へ入っていった。 ここには大島君が一度訪れている。 彼が以前会ったというフィリップとアラン。 彼らはラグビー部を率いる体育教師。 今回のプロジェクトを受け入れてくれた彼らを探す。 彼らは授業中だったが,僕らの到着を本当に喜んでくれたようで,欧州人らしい体いっぱい使った表現で僕らを歓迎してくれた。 授業中の生徒達は,異国から来た僕らを興味深そうにはやし立てている。 挨拶もそこそこに,僕は早く神輿を見たかった。 僕たちは寝泊まりする小さな体育館へ案内され,そこに厳重に梱包された神輿が,あった。 一緒に直した小池君と僕は足早に駆けつけ,梱包を解いた。

南仏神輿物語11 フォルクスワーゲン

2014/11/13 フランス神輿

空は、くすんでいる。 フランスについたからといって青空が出迎えてくれるわけではなかった。 ポーと言う小さな空港に大きな荷物を転がし一行は南フランスへ辿り着いた。 しかし、日本の都会と比べてさほどの違いは無い。 日本人があまりいない、というだけでポーの空港は日本の地方のショッピングモールの印象に近い。 いかに日本が西欧のセンスを真似しているのかがよくわかる。 あまり感動のないまま僕らは目的地ダクスへ向かうべく車を借りることにした。 しかし人数は6人、大きな荷物がたくさんあった。 普通の乗用車では難しく僕が日本でいつも乗っているマツダのボンゴ、トヨタのハイエースのようなものを探した。 いつも運転しているし、便利さはわかっている。 なかなか見つからなかったが、いくつかのレンタカー屋をあたり、やっと9人乗り、フォルクスワーゲンのバンを借りることが出来た。 僕は車に乗ってやっと異国を感じてきた。 左ハンドル。なにより厄介なのはシフトレバーが逆なことだ。 車体もそれなりに大きいため慣れるのに時間がかかる。 日本でもマニュアル車しか運転しないが、普段全く運転しない人ではおそらく到底運転出来ないだろう。 手に入れた大きな移動手段。 仲間達は荷物を詰め、僕の運転するフォルクスワーゲンに乗り込んだ。 これから始まる物語の予感がして来たようだ。 みんなの気運が高まっている。 さっきまで疲れていたみんなの声が弾んでいるのがわかった。 正確な地図も持っていない。 僕らはダクスへ向けクラッチを上げた。 フランスの道には、ラウンドアバウトというものがある。 というより、信号がない。 信号の代わりにほとんどの交差点がラウンドアバウトというものになっている。 これは、交差で交差するポイントに円状に道路が作られ、そこを回りながら進行方向に向かうといったものだが、方向も定まっていない僕らは、慣れないのも手伝ってとりあえず行きやすい方へと流れていった。 そこで見つけたのがスーパーマーケット、カルフールだ。 フランスにも日本の地方に見られるような大きなスーパーマーケットがある。 僕たちは最初の買い物を、ここですることにした。 日本でも言えることだが、他の土地を訪れた際、スーパーマーケットに行くのは大変面白い。 その地方にしか売っていないものや、そこでしか見られない風景が必ずある。 異国であればなおさらだ。 ここで特筆すべきはやはりチーズと肉製品の充実だろう。 日本では先ず見られないだろうチーズの種類、そして大きさ。 価格もそんなに高くない。 異国でのハイテンションも相まって、大量のチーズと生ハムを購入した。 あとバゲットがあれば、最高級のサンドイッチが出来上がる。 ダクスまでどのくらいかかるのか、何があるのかは一切わからない、が美味しいサンドイッチがあれば旅は豊かになるはずだ。 今度は食糧をたくさん詰め込んで、僕はエンジンをかけた。 神輿は、もうダクスにある。

南仏神輿物語10 シャルル・ド・ゴールの朝

2014/11/10 フランス神輿

約13時間。 僕たちは数カ所に分かれ,狭いエコノミークラスの椅子で退屈な時間をやり過ごしていた。 飛行機の中は,窮屈という二文字があまりにぴったり当てはまる空間だ。 乗る前に時間をつぶす方法を色々と考えていたが結局あまり何もせず寝ていた。 起きると,パリはもう近かった。 飛行機の中では何も感じられないが,大分遠くに来たようだ。 室内は,寒い。 到着したのは現地時間の朝4時ころ。 東京とパリでは約7時間の時差がある。 重量制限をクリアするため無理矢理荷物を分けて振り分けた手荷物はとても重く,飛行機を降りても,薄暗く灰色の無機質な空港では,遠い地を感じる事はなかった。 ここから国内線に乗り換え,ポーという空港へ行く。 出発はAM8時。 約4時間。 僕らは空港内を走る黄色いバスに乗り込み,出発ロビーへ向かった。 ロビーへつくと,やっと見慣れない風景が見えてきた。 日本人のほとんどいない広い空間。 ちっとも内容のわからないフランス語のアナウンスや案内板。 僕らは朝ご飯にサンドイッチを買った。 フランスのサンドイッチは大きい。 空港のため値段も高かったが,フランスに来て初めての食事だ。 そのサンドイッチの美味しいこと! 空腹や,異国の食事だというスペシャリティもあったが,それよりも先ず,美味しい。 日本でサンドイッチを食べても,添加物のかたまり,といったところで美味しくはない。 しかしフランスのサンドイッチは,きっともっと材料がナチュラルで,ハムもとても味わい深い。 土地を移ると先ず美味しいものを探したくなる僕は,サンドイッチを食べて新しい場所に来た事を確認した。 ここは,フランス。 ここでもう一人合流した。 京都から来る,えりちゃんだ。 彼女は女医さんで,僕の学生時代からの友達。 忙しい中も世界中色んな所を回っている。 先日京都へ行った時,フランスでのお祭りの話をしたら,ふたつ返事で行く!と。 自由闊達な女性だ。 もうすぐ飛行機が飛ぶ。 国内線は数十人しかのれない小さな飛行機だ。 南フランスの小さな村へ向かう日本人の集団。 僕らが神輿を上げに行くことなど,だれも知らないだろう。 今日,ダクスの町で約2ヶ月ぶりに神輿と再会する。 暗いガレージで何日も何日も磨き上げた神輿は果たしてしっかりとフランスへ到着しているのだろうか。 ついにフランスへと降り立った。 数日後,神輿が上がる。 一年に何回も何回も行っていることだが,今回はたくさんの特別で彩られている。 神輿の力を,示せるだろうか。 少しの不安と再会する慶びを胸に抱き,僕は小さな飛行機の椅子でもう一度,短い眠りについた。

南仏神輿物語9 羽田空港

2014/10/27 フランス神輿

風と鳥と自由。 夜,飛行場から飛び立つ飛行機を見て,僕はそんなことを考えていた。 鳥は空を飛ぶ時,その翼を大きく羽ばたき空へ飛んでいく。 空中で風に乗り,滑空している時,例えようのない自由を感じるのだ。 鳥の気持ちはわからない。 彼らは必死かもしれないが,人は自由を感じる。 理屈の無い感情は,人の遺伝子に刻まれた空への憧れなのか。 風をつかまえた鳥の姿は美しい。 これから僕たちは,フランスへ行く。 僕は,祖母の家から桃色の大きなトランクと,黒いバッグを持って家を出た。 親戚の黒いエスティマが迎えに来てくれた。 羽田空港へ。 出発の日,それはいつも特別な日だ。 まだ幼い頃,どこかへ出かける時,どうしてあんなにもワクワクしたのだろう。 まだ見ぬ知らない場所へ思いを巡らし,夢のような風景が無限に湧出してきた。 心踊っていた。 しかし今心の中は少し違う。 異国の地で神輿を上げるワクワクのアウトラインがくっきりしている。 アウトラインをなぞるのは,責任感だろうか。 ネオンサインやテールランプ,空には飛行機の灯りが近い。 それでも月は変わらず輝いていた。 夜の湾岸道路。 空港に,着いた。 久しぶりに訪れた羽田空港。 ここに,仲間が集まって来る。 仲間達と行くフランスへの神輿渡御。 たくさんの物語が待っているはずだ。 エレベーターを上ると,出発ロビーだ。 たくさんの人が大きなキャリーバッグを転がし,歩いている。 ここで合流するのは,4人。 大島君,たくや君,後藤さん,そして小池君だ。 石巻,茨城,東京,会津,横浜。 様々なところから集まって来た。 間違いなく祭が,神輿が繋ぎ,深めたご縁。 物語は始まろうとしている。 集まって来た仲間達はみな素晴らしい表情だ。 一人,また一人と再会するたびに,エネルギーが集まるのがわかる。 みんなでこの日のために様々な試行錯誤をしてきた。 思いはそれぞれだが,目的はシンプルだ。 神輿を上げること。 最後の一人と合流する前に一杯のブラックコーヒーを飲み干して,僕は眼差しを新たにした。 全員が,集まった。 仲間達が集まると,自然と豊かな会話が生まれ,笑顔が咲く。 仲間達の笑い声を聞いて,物語は動き出す。 僕たちはフランスへ,奇跡を起こしにいく。

南仏神輿物語8 かたつむり

2014/10/25 フランス神輿

かたつむりを最近見ない気がする。 まだ小学生だった頃,かたつむりを飼ったことがある。 そいつは紫陽花の大きな葉の中にいて,ゆっくりじっくりと歩いていた。 そういえばやつらには2本の角があって,何かを探していたのだろうか。 出発の朝,6月の雨の日。 目が覚めても,昨晩の雨は弱まってなかった。 予報は,雨時々曇り。 神輿搬送のタイミングは,「時々」にかけるしかない。 シトシト,ではなく土砂降りの雨だ。 それでも神輿を運ぶため,力綱をかけなければならない。 かけなければ,神輿は壊れてしまう。 作業場となっていたガレージの天井が低く,一度外に出さなければ鳳凰がつけられない。 応急でブルーシートで屋根を作り,神輿を引っ張り出した。 とても美しい。 くすんだ天気の中でも,真鍮は黄金色に輝いている。 日の光があればより神々しく輝くのだろうか。 大島君と二人神輿に縄をかけていく。 神輿には鳳凰がつけられた。 力綱は,鳳凰の足にかけられる。 鳳凰が降り立った神輿の姿は,ただ美しい。 日本人が行き着いた神輿と言う造形は,遺伝子を揺さぶる。 鳳凰は,遥か海の向こうで羽ばたくのだろうか。 神輿は,静かにその行く末を待っている。 雨は,勢いを止めない。 出発は,昼過ぎにすることになった。 あまりの雨量に,神輿を運ぶのは難しい。 午後雨が弱まるのを待つことにした。 修復は,約一ヶ月。 かなり急いでの作業だったが,神輿は見違えるように美しくなった。 神輿と向き合い続け,夜を重ねた。 それは神輿と,背負って来た人達,祖父との会話だった。 神輿は新たな舞台へと旅立って行く。 たくさんの人との出会い,たくさんの物語が待っているのだろう。 神輿には,さらに数人の仲間達の思いが乗った。 神輿はキャンターに乗せられた。 神輿と,馬,飾り綱,鈴,掛け矢,麻縄,拍子木,輪木。 一式が搭載される。 青いキャンターの荷台に輝く金色の神輿。 その姿は子供の頃憧れたロボットの様で,かっこいい。 だけど少しだけ,かたつむりに似ていた。 神輿はたくさんの笑顔に囲まれて送り出されることになった。 古びたクラクションの音が,空になったガレージに響いた。 僕たちは横浜港へと向かう。 神輿は港で運送会社に引き渡され,船に乗る。 横浜港へ入るのは,初めてだ。 たくさんの大型トラックが行き交う。 独特の雰囲気がある。 整備され,地区は大きく区画分けされている。 道路はかなり広い。 2トンのキャンターはここへ来ると小さく見える。 不慣れな僕たちは,目的地を探すのも一苦労だ。 引き渡し場所には,運送会社の人がもうスタンバイしていた。 神輿の輸送は,もちろん初めてだと言う。 複雑で細かい造形物の輸送には,細心の注意が必要だ。 フォークリフトで慎重に神輿は降ろされた。...