明日襷のブログ

[ベルリン神輿から南フランス神輿へ②]おっさんと耳を探せ!

2016/05/25 神輿、祭

さて!モンレジョ駅に何とか到着しました。 もう時間は18時半。フランスは21時過ぎまで暗くなりませんが,そろそろみんなお家へ帰る時間です。 僕らは2年前この小さな村で会ったかすかな記憶と一枚の写真を頼りに名前も知らないおっさんを探すことになりました。 昨日忘れた「獅子の耳」も・・・! 僕も,もう一人の勇太朗(以下勇ちゃん,ベルリンから一緒に旅してきた最高のともだち)も,大変重い荷物を背負って汗だくになりながら聞き込みを開始します。 おっさんの写真と昨日書いたメモを持って・・・。 僕らの作戦は, 1、まずおっさんを見つける 2、おっさんに昨日泊まった家に電話してもらって耳を返してもらう の流れです。 どうせ小さな村だからと駅から少し歩いてみても,まず全然人がいない! ちょっとしたスーパーに着いて聞いてみても誰も知らず,ヒッピー風のおっさんに意気投合した感じを出されて(特にしていないけど)とりあえず2年前見た風景を見つけに丘を上ります。 しかし想像以上に体力を消耗します。 すれ違う人に何回聞いても誰も知らない・・・! 小さな村だからって全員顔見知りというわけでは無いようです。(当たり前か) 少し道を間違えたりして手がかりが全然無い中時間ばかりが過ぎていき,もう8時近く! そろそろ暗くなってきます。 野宿を覚悟しながらも2年前泊まった教会を見つけ,祭りがあった市役所の方へ。 汗だくになりながら教会の角を曲がって真っ直ぐ歩いていきます。 前来た時は,ここにぶどうがなっていたっけ。少し期待しながら,季節が違うことに気づいてがっかり。 お腹すいたし,のども渇きました。 丘の上の広場に着くと,目の前はピレネー山脈です。 疲労困憊,意気消沈の僕らには残酷な美しさ。 ベンチに座り込み,荷物整理という名の休憩を始めます。 しかし休憩中も捜査は続行。 先程より少し真剣さが欠けますが通る人には必ずメモと写真を見せます。 エキュスキューズモア→メモを見せる→おっさんの写真を見せる→首を横に振る→メルシー がルーティーンになってきた頃,一人のおばちゃんが登場! 右手にミントと水を持った気の良さそうな散歩中のおばちゃんが,何やら協力してくれることになりました(フランス語なので雰囲気)。 多分!近くのお店の人なら知ってると思うから一緒に言って説明してあげるよ!と言っています。多分。 それからまた荷物を背負い,おばちゃんと一緒にピザの移動販売のおっさんに写真を見せると。 知ってる知ってる!と言っています。(多分) 彼の名はJORDA。名前がやっとわかりました。 おばちゃんがJORDAの家をピザ屋に聞いてくれて,何とか家が判明!(多分) なされるがまま,僕たちはおばちゃんについて行きました。 おばちゃんの懸命な聞き込みにより,何とかこの辺ではないかと言うところまで来ました! 門の前で考え込むおばちゃん。 多分ここだと思うんだけどなーっぽい雰囲気を出して門から奥のお家へと入っていくと,前から大きなシェパードが走ってきて,おばちゃんが慌てて逃走! 僕たちもおばちゃんのただならぬ顔を見て,逃走! おばちゃんが困ってしまっていたので,僕たち二人でこの辺で待ってみますっぽいジェスチャーをして,おばちゃんに10回くらいメルシーと伝え僕らは野宿を覚悟しました・・・。    

[ベルリン神輿から南フランス神輿へ①]モンレジョについた日

2016/05/24 フランス神輿

ベルリンから1800kmの道のりを走り,モンレジョに到着。 神輿を乗せた黄色のバンは,盟友ニコちゃんが運転し颯爽と帰って行きました。 しかし,その晩ニコちゃんから連絡があり,「鍵がない!」と。実は黄色のバンは鍵が回らないトラブルにより直結により動いていました。 翌朝,Ayalex Toshierのばあちゃん家の庭を見ると,鍵が落ちていました。 車は15時までに返さなくてはいけない!僕たちは急いでトゥールーズを目指します。近所のおばちゃんが車で送ってくれて,何とかセーフ。ニコちゃんに鍵を返すことが出来そうです。 しかし僕らは電車の車内であることに気づきます。 何と,獅子舞の耳が無い! 急いで車から降りたので,おそらくおばちゃんの車に忘れてしまったのでしょう・・・。 僕らはとりあえずトゥールーズを目指します。 駅近くのケバブ屋でwifiを拾い無事ニコちゃんに連絡。 長い別れだと思っていたニコちゃんともう一度再会でき,感動でした。 ケバブ屋のお兄さんは獅子に興味津々で,何度説明してもドラゴンと言い張っていました。 その後,もう一度アイテム「獅子の耳」を見つけにモンレジョへ。 2時間も時間があったので獅子を背負いトゥールーズを歩き回っていると街ゆくピエロに話しかけられたり(ピエロは敬意を払う時,帽子ではなく鼻をとるらしい)大きな教会の中では興味津々のアフリカ人に質問攻めにあったり楽しかったです。 それから僕らはもう一度列車に乗り込みモンレジョへ。 僕らのミッションは2つあって, 1、2年前モンレジョで神輿を上げた時に仲良くなったおっさんを見つけること(手がかりは当時撮った写真のみ。名前もわからない) 2、アイテム「獅子の耳」を取り戻すこと。 僕らは期待と,ちょっぴり不安を抱えて列車の中の南フランスのヤンキーの様子をちらちら見ながら約1時間半の道のりを楽しんでいました。 さあ,モンレジョに到着! おっさんと「獅子の耳」の捜索が始まります・・・!

ベルリンで神輿が上がった

2016/05/16 神輿、祭

ベルリンで、最高に嬉しい神輿が上がりました。 ベルリナー達の熱狂は、渦となって美しく力強い神輿の姿となっていました。 終わった後の直会では、みんな口々に 「来年はこうしたい!こうしよう!」 と話していました。 いつか神主さんに言われた、 「海外で神輿を上げるなら、来年もやりたいと思ってもらえる神輿の文化を伝えなさい。それが10年、20年と続いたら、日本人はそれを神様と呼ぶのかもしれないね」 の言葉が思い出されました。 祖父の神輿がベルリンのたくさんの人に担いでもらえて、最高の笑顔をたくさん作り出せたこと。僕は本当にこの神輿を、祖父を誇りに思います。 文化の力、祭りの力は素晴らしい。 日本人であることを誇りに思った最高の一日でした。 本当に楽しい祭りが終わって, 「日本にはこんなに楽しい祭りがたくさんあるんでしょ!本当に素晴らしいね!」と たくさんのドイツ人に言われました。 だけど僕は, 「祭りはたくさんあるよ,だけど今どんどん無くなっているんだ。そしてそれを守る人も減っているんだよ。」 と言いました。 信じられない!日本人はどうかしてるの!? と言った表情。 僕は自身の文化を大切にしなければいけないと心から思いました。 ベルリンでお神輿を上げることができて,本当にたくさんの笑顔に囲まれ,たくさんの人たちが神輿を肴に飲んだ日。 僕はより一層の思いで,引き続き日本の祭りの未来に貢献しなければと感じました。 これからもたくさんの人に祭りの楽しさを伝え,守る方法を模索していきます。 祭りのこころ,日本人のこころとは何なのか。 もっと真剣に考え,行動していこうと思います。 僕たちの次世代のために。 何を残さなくてはいけないのか,何を残してはいけないのか。 最高に楽しかった一日は,強く自身を律することになった一日でもありました。 TBSnews http://news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye2774844.html

導かれた場所,すさみ町〜和歌山周参見王子神社〜 最終章,宮入りへ

朝,今日は周参見王子神社の本宮です。 昨日の宵宮の雨は止んでいました。 今日僕はお神輿を担がせてもらいます。 「お神輿」というキーワードで僕はどれだけのご縁を頂いたでしょうか。 この日のお神輿,僕は最年少です。 三日目になると,少しづつみんなとも顔馴染みになってきました。 「おはようございます!」と言うと,笑顔で返してくれる朝。 もう一度,神社へ向かいます。 神社には各町からだんじりや屋台がやってきていました。 小さな神社に,たくさんの人が集まります。 焼きそばや,フランクフルトの出店の前では,嬉しそうに子供達が集まっている。 僕も小さい時,あんな姿でした。 そんな風景が,今も更新され続けるすさみ町。 僕は下地の半纏を脱ぎ,神輿衣装に着替えます。 烏帽子と装束を着ますが,下に着るのは「タッツケバッチ」です。 はじめタッツケバッチとは何のことなのかよくわかりませんでしたが笑,和歌山の言葉で,祭り衣装の股引のことを言っているみたいです。 僕はお囃子をたたく「若衆」とは別に,衣装を着替えて下地のレジェンド達と神輿を担ぐことになりました。 皆,一年に一度のお神輿に備え,シャツの肩部分の内側にタオルを入れ,縫い付けてあります。 手作りでお神輿用に作ったんだろうな,と思うと少し微笑ましくなりました。 すさみのお神輿は特に掛け声はなく,談笑しながら担いでいきます。 神輿は海へ向かいます。 街中を歩いている時も,みんな家の前に出て,おばあちゃんと,おじいちゃんと。 笑顔で神輿やだんじりを迎えてくれます。 すさみ町下地地区は,全部で約600人程しかいません。 都会のお祭りの様に,我関せずと素通りしていく人なんて一人もいない。 僕は,人がたくさんいるわけではないけれど,ひとりひとり本当に楽しそうにお祭りを眺めている姿を,とてもうらやましく,そして美しく思いました。 町の人が大切に大切に守ってきた祭りに少しだけ関わらせて頂いている事を,とても光栄に思いました。 浜へ着くと,御仮屋が用意されていました。 前日の雨で,少し壊れてしまったんだとか・・・ ちょっとだけ傾いています。 御仮屋の中へ神輿を収め,神主さんにより神事が始まります。 「まなべっち!頼むよ!」 神主さんは近くの白浜から来ているそうですが,たなべっちと呼ばれています。笑 神主さんとこんなに親しいお祭りも珍しい。 知らないうちに,だんじりのみんなは化粧をしたようでみんなの顔が変わっていました。 「神社へ行って喧嘩しても,これで誰だかわからんやろ!」 若衆はさらに勢いを増しています。 神事が終わると,神輿の担ぎ手は,「金幣さん」のおうちの民宿へ。 「金幣さん」は祭りの総責任者で,毎年変わるそうですが文字通り金色の御幣を持っています。 美味しい海の幸を食べさせていただきました。 ここで,神主さんがなんでこんなに親しまれているのかがわかりました。 どうやら神主さん「まなべっち」は,大のお酒好きでいつもお祭りの間に飲みすぎてしまうようです。 「今年はちゃんとお宮まで行ってくれよ!」 なんて,冗談が飛び交っていました。 さて,食事が終わると大当番がまた迎えに来ました。 浜へ戻り,もう一度神事を行ってから神輿は神社へと向かいます。 神輿が動き出すと,みんな悪ノリして「まなべっち」にペットボトルに入った日本酒を飲ませます。 もうフラフラ。 途中でいなくなっちゃうし,休憩中寝そうだし,まっすぐ歩けていません笑 だけど,すさみの人たちは嬉しそう。 「こんな祭り,他にないだろ?俺たちも,神主さんも,一緒だ!」 ここに人がいて,祭りがある。 すさみの神様は,こんな風景を数百年も見守ってきたのでしょう。 僕らはもう一度神社へ向かいました。 フラフラの神主さんに連れられて・・・。...

導かれた場所,すさみ町〜和歌山周参見王子神社〜 土砂降りの宵の宮,闇夜のSOUNDCRASH

お祭り二日目の夜。 雨の降る中,だんじりと屋台は出発しました。 神社へ向かう真っ暗な道。 暗いすさみの街並みの中,ちょうちんの明かり,賑やかなお囃子,伊勢音頭。 酒も周り,祭りに「狂う」瞬間がやってきます。 ・暗闇の中の伊勢音頭 伊勢は津で持つ (ヨイヨイ) 津は伊勢で持つ (アーソーレーサー ソーレーサー) エーヨーエ 尾張名古屋は (ヤウデサーア) 城で持つ (ヨイサ ヤットコセーエ ヨーイヤーナ ソリャアレワイセ ソリャコレワイセ ソリャナーンデーモセ ヨイヨイ!) 雨はさらに強まります。 下地の青い半纏を纏うメンバーは,力を合わせだんじりとお囃子屋台を進めてゆきます。 近所の人たちも顔を出し,賑やかな声を迎えてくれていました。 土砂降りの雨の中を,大声を上げだんじりを曳いているとだんだんと気持ちが高まってきます。 高まってくる,というよりも,融解し,熟れてくる。 僕はこの,お祭りの中の魔力に身を委ね,神社へと向かっていました。 ・神社へ 神社には,周参見王子神社の氏子町会が集まっています。 境内の階段を上がり,お囃子を鳴らします。 神社は煌々と明かりが照らし,雨はさらに勢いを増します。 みんな,びしょ濡れ。 甲高い声を上げながら,太鼓を叩きこみ,笛を鋭く吹き続けます。 複数の町会がかき鳴らすお囃子。 様々な方向からお囃子の音色が聞こえてきます。 高まる音圧,熱気。 最高潮。 何度も何度も音がぶつかり合い,弾け,溶けていきました。 闇夜のサウンドクラッシュ。 すさみの宵宮,ここにも超一級の日本の風景がありました。 ・相撲開始! 最高潮の雰囲気の中,下地の仲間と相撲を取ることになりました。 若者たちが僕を囲み,さながらストリートファイト。 空間は充実と幸福に満たされています。 笑顔のまま,はっけよい。 もみくちゃになりながら,たくさん,笑いました。 いつしか,明るく話しかけてくれるようになった仲間たち。 とても嬉しく,楽しい瞬間でした。 ・帰りのだんじり 「力持ちなんだから,カジとってよ!」 仲良くなったワタルくんが,声かけてくれました。 帰り道,僕は一緒にだんじりのカジきりをします。 「ちょいととーりかーじ や!」 「力入れすぎだー!」 なんて言いながら,一緒にカジを切らせてもらいました。 なんだか仲間に入れてもらえたようで,とても嬉しかった。 こうして,だんじりは会館へ戻っていきました。 会館で,相撲の行司,稲葉さんと!笑 帰ってきてからもう一度,宴会! 一緒にだんじりを曳いた仲間と,昨日より深く,楽しくお酒を飲むことが出来ました。 本当に楽しかった!いよいよ,明日は本宮です・・・    

導かれた場所,すさみ町〜和歌山周参見王子神社〜 土砂降りの宵の宮,出発

ご縁が渦巻くすさみ町。 到着した日の大ならしの夜から,すさみ町の力に酔いしれていました。 つっちゃんとだんじりの話をした後は,宴も深まりやすっちさんとやすっちさんの師匠との太鼓のセッション。 南米のドラムのリズムを思わせるすさみの太鼓。 やすっちさんのアレンジがどんどんかかり,苛烈なリズムを刻みます。 そんな,すさみ大ならしの夜。 ・2日目,宵の宮 大ならしの夜はとても刺激的な夜でした。 すさみという異世界へ迷い込んだ心地よい違和感。 初めて会った人たちと,祭りを肴に飲む酒,人生で一番の瞬間だと,毎度思います。 さて。 夜も宴も更け,まだすさみの「若衆」達は一年に一度の最高の宴の中をゆらゆらと泳いでいました。 僕とやすっちさんは,一足先に帰宅。 「明日の朝は竹切りやで」 「俺は散髪」 そんな会話を覚えています。 僕は暖かくキラキラした気持ちを胸に,やすっちさんの家で眠りにつきました。 朝になり,もう一度会館へ行くと,昨日のメンバーがちらほらと。 今日は,だんじりの飾り付けをしなければなりません。 「軽トラ,来た?」 缶コーヒーを片手に,やすっちさんは祭りの朝の嬉しくも緩やかな始まりに笑顔を浮かべていました。 祭の朝の胸の高まりは,何とも言えません。 僕らは到着した軽トラへと乗り込み,だんじりにつける竹を切りに行きました。 昨日の夜つっちゃんと二人話し合っただんじりがどんな風に化粧されるのか,とても楽しみです。 ・祭りヘアーのやすっちさん 「宮田くんも,行こうや。」 僕はやすっちさんと車に乗り,田辺へと行きました。 田辺へと向かう30分強も,言葉にならないワクワクを胸に。 やすっちさんは,宵の宮へ向けモヒカンにするそう。 「見学してて」 言われるがまま,僕はやすっちさん行きつけの美容室で,何故か散髪を見学していました。 しかしここでも,話は祭りです。 美容師さんも,子供の頃見た祭りの風景の話や,神輿の話などしてくれました。 田辺の神輿は,鳳凰じゃなく魚なんだとか。 どこへ行っても通じるお祭りのお話。僕にとっては最高のコミュニュケーションツールです。 ・出発 少し,雲行きが怪しくなって来ました。 大雨が降ったらだんじりはどうしよう。 少し,そんな話もしていました。 だんだんと強くなる雨。 少し不安でしたが,もう一度会館へと向かいます。 いよいよ,お祭り本番。 街中で会う,「若衆」の雰囲気も少しずつ変化してきたように思います。 会館では,早くもメンバーが集まっています。 揚げたての串カツと,ビールは早く来た人たちの特権。 飲んで,騒いで,迎えに来る「大当番」を待ちます。 「大当番」は,今年の神輿運営の役員さん達で、地域の「お偉方」。 僕が祭りに参加するにあたり、知らないうちに身辺調査と書類審査が行われていたとか 笑 ちゃんと通ってよかったです。 2時間ほど経って,段々とみんなのボルテージが上がってきます。 酒も入り,若衆の勢いも上昇。 ついに,大当番が来ました。 若衆は肩を組み,土着のソウルミュージック,伊勢音頭を歌いながら出発の儀を。 外には少し,雨が降っています。 だんじりには朝切った竹に大きな旗が掲げられ,ちょうちんには灯りが灯ります。...

導かれた場所,すさみ町〜和歌山周参見王子神社〜 すさみのだんじり

初めてのすさみのお祭り。 僕は愛知でやすっちさんと合流し,一路すさみへと向かいました。 和歌山までの道は約4時間。 祭の先輩の,背中を追い求めやってきました。 すさみでは獅子風流,「大ならし」が始まっています。 夜は更けていき,宴が始まります。 僕の隣に座って,ずっとニコニコしていたおじいさん。 彼は,地元の大工さん,つっちゃんでした。 ・だんじり すさみのお祭りでは,だんじりを出します。 話を聞くと,100年ほど前,どこかからこの街へ来たんだとか。 明日の朝飾り付けられるだんじりは,宴の外でひっそりと闇に紛れていました。 僕の隣で,日本酒をちびちびと飲んでいたつっちゃん。 つっちゃんは,地元のお寺や神社の修復もする,古く腕のいい大工さん。 「俺がお寺の牡丹の彫り物やらせてもらった時はさあ,そりゃあ,性根入った。 和尚が俺に作らせてくれたんだ,ありがてえなあ。」 なんて,昔気質の職人です。 僕はこのニコニコしたおじいさんが大好きになり,色々話を聞いていました。 「外のだんじり,見たか?曲がってんだよな。」 ・ひん曲がっただんじり 僕は暗かったために気づきませんでしたので,つっちゃんと二人で暗い中外を見に行くことにしました。 そこにはとても立派なだんじりが。 正確には,傘鉾,というらしいですが地元の人はみんなだんじりと呼んでいます。 確かに,前から見るととても傾いているだんじり。 中の敷板以外は,総欅作りで,その土台の骨材となっている2本の欅が,暗い中見ても曲がっています。 欅というのは,大変密度が詰まっているためとても固く丈夫です。 しかし素性が悪いと,とんでもなくひん曲がってしまう特徴もあります。 昔は大黒柱にも良く使われていたようですが,施工後に欅が暴れると,家が歪むほどだったようです。 「岸和田のさ,だんじり屋に頼んだら数千万かかるって言われたんだ。多分,俺らの代では直せねえ。本当は,俺が生きているうちにさ,きれいになっただんじり引かれてるところ見てみたいな。」 つっちゃんが言っていることは痛いほどわかります。 これだけのだんじりを外部の業者が修理するとなると,全部分解,少しでも痛みのある部品は全とっかえ,しかも激しく動かすだんじりです。万が一があっては責任問題です。 おそらく,外部業者は数千万かけてでも,新調を勧めるでしょう。 ・最後の仕事 僕は寂しそうなつっちゃんの顔を見て,いいことを思いつきました。 「つっちゃんが,やればいいんじゃないですか?」 材料である欅は,我らが筑波材木店,筑波のアニキに相談できます。 材料が手に入り,地元の大工さんが施工するとなれば,話は別です。 「でも,これだけの欅だろ,材料だけでも,手が出ないほどじゃないのか?」 「明日,電話してみます。茨城,つくばには欅に狂った熱いアニキがいますから!」 それを聞いた,つっちゃんの輝くような少年の顔。 「もし,本当に手に入るなら,俺は生涯最後の仕事だと思ってやるよ。俺の代で直すことが出来るかもしれないなんて,夢にも思わなかった。本当にありがとう!」 きっとつっちゃんも祭が大好きなのでしょう。 小さい頃から,ずっとずっと気にかけていただんじり。 もしかしたらそれが,もう一度素晴らしく生まれ変わるかもしれない。 人の縁が,また素晴らしい物語を作り上げようとしています。 僕は直ぐに会長さんや,町の役員さんにもお話しました。 僕はつっちゃんが綺麗になっただんじりを見て,喜ぶ姿をどうしても見てみたいと,そう思いました。          

導かれた場所,すさみ町〜和歌山周参見王子神社〜 大ならしの夜

あの夏の奇跡の出会いから,二ヶ月。 僕はまたすさみ町へと向かいます。 「祭り」がくれたご縁を辿り,もう一度物語を紡ぎに・・・。 ・やすっちさんとの再会 関東を出発して,まず僕は愛知へと向かいました。 「祭り狂い」のやすっちさんを拾いに。 やすっちさんは普段愛知に住んでいて,休みになると,4時間かけてすさみへ戻り太鼓を叩きます。 まさに「祭り狂い」。 僕は少し早めについて,久々の再会を待っていました。 あれから,会うのは2回目。 前回はさんざんお酒を飲んで大騒ぎしていましたが,なんだか今日は少し緊張しています。 僕は何となくそわそわしながら,待っていました。 すると,電話が鳴ります。 「ついたよー,どこー?」 しばらく待っていると,大柄で笑顔いっぱいの人が向こうからゆっくり歩いてきます。 手を振ってみると,やはりやすっちさん。 優しそうで,とても熱い「アニキ」です。 二人で車に乗り込み,そこからはずっと祭りについて。 すさみへの道のりは約4時間です。 今日の「大ならし」に間に合うかどうか。 「大ならし」では,すさみに伝わる獅子を祭りのメンバーが披露します。 わりとスムーズに道を走らせながら,熱く熱く祭りについて話しました。 祭りの根底にあるもの,意味,継続の難しさ,伝統と更新,地域構造について,など。 お祭りの未来について,一生懸命話しました。 すさみ町が近づいて来ると,やすっちさんは太鼓のリズムを刻み始めます。 1年に1度の最高に大好きな日。 たくさんの仲間たちと一緒に祭りをやれる日。 やすっちさんの心の高鳴りは,僕にもまっつぐに伝わってきました。 ・大ならし すさみ町へ向かう道は,とにかく真っ暗。 車を置いて,やすっちさんのそわそわした姿を追いかけます。 向こうの方に,人が寄っている気配。 大ならしが行われています。 真っ暗な夜道から,いきなり広がるお祭りの雰囲気。 舞う獅子の周りを囲むたくさんの人たち。 真剣に,楽しそうに,多くの人たちがとても明るい空間を作っていました。 きっと,何代も続いてきたこの風景。 お年寄りも,子供も,世代の流れの中の当たり前の時間がとても心地よくて,そこにいることが出来るだけで本当に嬉しく思いました。 僕は,お囃子の奏でる特徴的なリズム,切れるような高音の笛,激しくコミカルな獅子。 そして人が織りなすあまりに心地よい雰囲気に酔いしれていました。 すさみへ来る前,パリにいらっしゃる長野藪原神社の神主さんよりご連絡を頂き, *周参見王子神社の獅子、実家藪原神社の獅子に良く似てる *藪原神社は680年に和歌山から当時の皇族の美濃王が熊野の神々を勧請して創建され、例祭のルーツもそこにあるかもしれない 藪原神社の獅子は,こんな獅子です。 ということで祭りのルーツを考えながら,バンコク,フランスと世界中からのご縁が渦巻くすさみの魔界へ,そっと入って行きました。 ・宴会 大ならしが終わると会場には机が並べられ,宴が始まります。 僕はやすっちさんの隣へと座り,新しい里の新しい出会いに心ときめかせていました。 やすっちさんのお父さんや,お盆の時にお会いした稲葉さん,祭りの副会長さんに,地元の大工さん。 ひとりひとりの祭りの「レジェンド」達がたくさんお話を聞かせてくれました。 お祭りの先輩達の祭りの血液が,このすさみでも脈打っています。 僕の祖父が熱く燃やした祭りの思いと同じ温度の情熱が遠くここ和歌山にもありました。 すさみで過ごす3日間。 祭りが,始まりました。

導かれた場所,すさみ町〜和歌山周参見王子神社〜 はじまりの出会い

2015/10/13 神輿、祭

最初の出会いは,バンコクでした。 2015年3月,僕がバンコクで御輿をあげた日。 その時は,こんな物語になるなんて,思ってもみなかった。 縁は奇なるもの。 すさみのお祭りがくれたご縁と物語を,少しづつ,辿ってみようと思います。 ・バンコク,サイアムパークで 今年の三月,ドラマ「きもの秘伝」をきっかけにタイ,バンコクにて日本文化を紹介するイベントを行う事になりました。 そこで茶,書道,盆踊り,着物,御輿といった専門家のチームとともに,タイを訪れました。 その御輿を一緒に担いでくれた,通りがかりの元気な男性。 とても盛り上げて頂いたのでご挨拶をすると,和歌山で校長先生をされていた方だとか。 それが僕と和歌山の最初のご縁でした。 いつか和歌山に来る事があれば連絡してよ!と気持ちよく言って頂いた事を覚えていました。 ・岐阜,奈良そして和歌山へ 今年のお盆。 僕は岐阜の火祭りへ,バンコクのイベントを共に作り上げた仲間と参加してきました。 火の粉をさんざんかぶり,火傷だらけになりながら御輿を担ぎました。 祭りの後,向かったのは奈良。 修験道の修行を終えた友人の元へ,2017年に行われるという御霊神社1300年祭の神輿渡御のための偵察へ。 奈良でも新たな歴史の一ページが刻まれようとしています。 奈良についてはまた後日,説明することとします。 到着してから奈良の町や歴史を見,神主さんと話したり神社を訪れていました。 すると,友人から和歌山へ行ってみないかとの提案がありました。 和歌山に,「祭り狂い」な人がいると言います。 どうやらSNS上での友人のようで,一度もあった事はなく,7年半の時を超え初めて会う事になる人。 お盆で里へと帰ってきているし,せっかく僕も一緒という事で,少し足を伸ばしてみようか,と。 和歌山県牟婁郡すさみ町。 それまで聞いた事も無かった場所。 そこへ行ってみる事にしました。 しかし,待てよ・・・? 和歌山には,バンコクで出会った元気な先生が居たような。 調べてみると,和歌山の二人はfacebookで繋がっていました。 連絡してみると,小学校の頃の隣のクラスの先生だったとか。 先生のあだ名は「ゴリラ」。 当時は竹刀を振り回し,大変厳しい先生として恐れられていたようです。 和歌山というキーワードでここまで繋がる事も驚きですが,さらに二人は同じ町内で,ご近所だとか。 また祭りが引き起こす奇跡に驚愕し,胸躍らせながら僕らは和歌山,すさみへと向かいました。 ・すさみ町へ 奈良,五條から高野山へ登り,龍神スカイラインを下って紀伊半島を縦断。 約4時間の道のりを,男二人で。 龍神村を流れる日高川を横目に,美しい村の風景と風を感じながら走ります。 澄み切った川の水と,息吹く人の営み。 ご縁が巡る奇跡を辿る旅と物語の始まりの糸を手繰り寄せていました。 今日の夜は,4人ですさみで酒を飲もう,と。 先生達も,ちゃんと再会するのは約20年ぶり,酒を飲むのは初めてだとか。 SNSと祭りがあって生まれたご縁の渦。 本当に楽しみです。 僕たちはすさみ町へと到着しました。 初めて来る町,初めて感じる風。 物語の始まりです。 僕らは初めて出会いました。 その,奇跡の夜まで時間があったので紀伊半島を少し案内してもらいました。 本州最南端,潮岬,紀伊大島,枯木灘。 ・すさみの夜 そして夜,先生と合流して僕らは酒を飲みました。 バンコク,奈良,和歌山。...

2年越しの晴天〜小田原成田三嶋神社〜

・成田三島神社 10月4日,日曜日。 今年も小田原,成田(なるだ、と読みます)三嶋神社の祭礼が行われました。 こちらの三嶋神社のご縁は,毎年お世話になっている小田原駅付近で行われる北條五代祭り,大稲荷神社のお祭りにて「四区」のお神輿を一緒に担がせていただいている方に誘っていただいたのをきっかけに参加させていただいています。 ・朝四時,起床 小田原まで,2時間強。7時半の集合に間に合うには,4時台に出発しなければなりません。 2年前,初めて担がせて頂いた時もそうでしたが,まだ辺りは真っ暗。 日の出前の出発です。 昨年は残念ながら大雨により祭礼は中止でした。 楽しみにしていましたが,2年越しの神輿渡御。 本日は,晴天です。 ・懐かしの風景 2年前,1日だけお世話になった成田の町。 高速のインターを降りると,もうすぐそこです。 神社の側には,三嶋神社祭礼と書かれた白い旗がいくつか立っています。 僕はまず,電車で来る友人を近くの螢田駅に迎えに行くため,車を走らせました。 周辺には,幾つかの神社のお祭りの旗が立っています。 この周辺は,みなお祭りの日のようです。 まだ早朝の道,酒匂川を横目に,僕は記憶を辿りました。 神社にはたくさんの人が集まっています。 何となく,見たことある人たち。 2年前の記憶を少しづつ取り戻していきました。 ・肩の記憶 三嶋神社のお神輿は,一言でいうと,「重い!」 小田原特有の担ぎ方で担ぐ「小田原流」。 神輿を揺らしたりせず,おいさー!こりゃさー!の掛け声で緩やかに進むお神輿。 「動」のどっこいや,江戸前と違い,「静」の美しさがあります。 しかしそれだけではありません。 小田原流最大の特徴は,神輿が「飛ぶ」のです。 小田原木遣りという浜唄を唄った後、神輿は一目散に走り、ピタと止まります。 静かに動く神輿が急に走り出すコントラストは,江戸前やどっこいには無い味と言えます。 しかし,担ぎ棒はすさまじく肩にのしかかってきます。 その肩への重圧は,また特有です。 担いでいるうちに,掛け声や,表情,姿などが蘇りいつかの風景をすっかり取り戻していました。 三嶋神社のお祭りは、長い! 昼の休憩を挟んで,午後もさらに町内を回ります。 休憩がたくさんあるので,重い神輿も何とか一生懸命担いで行けます。 家の庭や,公園などに寄るたびに飲み物やおつまみを出していただきます。 とてもあたたかい町内。 昼休みも,たくさんおむすびを食べてしまいました。 ・小田原四区から合流 お世話になっている小田原四区から,地区の運動会を終え3人の仲間が合流しました! 先日の地元の神社の時も担ぎに来ていただき,四区の皆さんは盟友です。 毎年のGWでは,本当に楽しいお祭りを一緒に出来る仲間です。 もう何年もお世話になっていますが,年々本当に仲良くしてくれてとても嬉しく思います。 最高の仲間たち。 午後は一緒に神輿を担ぎます。 担ぎ手の人たちも,入れ替わります。午前中だけの人もいれば,午後からの人も・・・。 たくさんのご縁でお神輿が上がっていきます。 ・御浜めぐりの神事 夕方になると,女神輿も動き出します。 小さめの神輿ですが,女性のみで担ぐ神輿。 普段なかなか肩が届かない女の子も,がっつり担げます。 もちろん,木遣りもやるし,飛びます! 成田三嶋神社でとても興味深いのは,「御浜めぐり」という神事を行うことです。...